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バイヨンの月

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『バイヨンの月』
 著:森本喜久男
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発行:風鯨社
A5判 縦210mm 横148mm 232ページ 並製
価格 2,455円+税
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IKTT(クメール伝統織物研究所)を1996年に設立し、カンボジアの伝統的絹織物の復興と再生に取り組んできた故・森本喜久男が22年前に著した草稿が甦る!
カンボジア内戦を生き残った「おばあ」たちの手の記憶を甦らせ、その技術を若い世代に継承させるだけでなく、素材となる生糸や自然染料の自給と、染め織りとともにある暮らしの再生を目指す「伝統の森」という村を作り上げるに至った経緯とその背景を思いのままに綴った記録が、詳細な註ならびに現在に至るまでの経緯と解説とともに出現。カンボジアのノロドム・シハモニ国王から「この布にはカンボジアの心がこもっている」との称賛を得るに至った絣布が生まれるまでの足跡がここに!

=編集者コメント===
この『バイヨンの月』の原稿を森本喜久男さんがまとめたのは2001年から2002年にかけてのこと。その当時の出版であれば、本書はIKTTのリアルな活動記録という位置づけもできた。だが、それから20年以上が経った。改めて読み返してみると、かつてあったはずの「草木染」技術への記述は、自然を敬う気持ちと、布が織り上がるまでの手間への愛情に満ちている。今なお進行中の「伝統の森」再生計画は、一義的には、かつてあったはずの「村の暮らし」の復活だが、最終的にはきわめてすぐれた「循環型社会」の構築へと移行する試みの記録であり、アジアの農村で「女性たちのため」の「持続可能な発展」を試みるNGOプロジェクトの先行事例として読むこともできる。
 だが、一つひとつのプロジェクトが、彼が思い描いたとおりに順調にいくとは限らない。「xxを始めようと思ってるんだよね」という話を聞いてはいたが、その後それを始める気配もなく、諦めてしまったのだろうかと思っていると、二年か三年経ったころ、それがとつぜん動き出すこともあった。予算の都合なのか、ふさわしい担い手がみつからなかったのか、それより優先すべき案件が飛び込んできたのか、……そのすべてだったのだろうと、今では理解できる。IKTTの活動は、複数のNGOがそのミッションとして掲げているような事業を、森本さんひとりで回していたからだ。伝統織物の復興、その担い手となる女性たちの就労と生活支援、染め織りに必要な桑や綿花そして染め材となる植物の栽培と育成、これらの作業を行なう工房と一体化した生活の場の構築、さらにはそれらをすべて包み込む自然環境の再生など、――こうしたさまざまな事業は、最終的には「世界一の布をつくる」ということに集約され、森本さんの頭の中では迷うことなく緊密に結びついていた。
 今回、本書を発行するにあたっては、その後の経緯や、参考資料による補足、思い出したかのように森本さんが語ったことなどを脚注として加えることにした。それにより、当時の状況を知らない読者や、森本さん個人には会ったこともないという現在の読者にもなんらかの参考になれば幸いである。
 なお、本文で使用したモノクロ写真は当時のもの、あるいは当時の様子がうかがえるものを使用するようにした。一方、口絵のカラー写真については、ごく最近のもので構成している。二十年のときを経て、さらに進化したIKTTの染め織りを堪能していただきたい。

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